進行性多発性硬化症(MS)は、神経系の慢性疾患であり、患者の日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。認知機能の障害はMS患者に頻繁に見られ、これを改善するための有効な治療法の開発が求められています。最近のCogEx試験は、この目的を達成するための一歩として、認知リハビリテーションと運動の組み合わせが進行性MS患者の認知機能にどのような影響を与えるかを調査しました。
研究の背景
進行性MSは、身体機能の低下だけでなく、認知機能にも影響を及ぼす可能性があります。これには、記憶、集中力、処理速度などが含まれます。CogEx試験は、これらの認知障害に対処するための新しい方法を探求することを目的としています。
方法論
この研究は、ベルギー、カナダ、デンマーク、イタリア、英国、および米国の11の病院クリニック、大学、リハビリテーションセンターで行われたランダム化、シャム対照試験でした。進行性MSを持つ25歳から65歳の患者311人が登録され、拡張障害状態スケール(EDSS)スコアが7未満である場合に含まれました。全ての参加者は、基準データからの遅延を示す処理速度の障害を持っていました。
実施された介入
参加者はランダムに4つのグループに割り当てられました:認知リハビリテーションプラス運動、認知リハビリテーションプラスシャム運動、運動プラスシャム認知リハビリテーション、またはシャム運動プラスシャム認知リハビリテーション。認知リハビリテーションは、コンピューターベースの個別化された段階的なアプローチを使用していました。運動介入は、個別化された有酸素トレーニングを含み、リカンベントアームレッグステッパーを使用しました。
主要な結果と結論
12週後のSDMTによる処理速度の評価では、群間で有意な差は見られませんでした。したがって、認知リハビリテーションと運動の組み合わせが進行性MS患者の処理速度を改善することは確認できませんでした。また、この試験は非活動的なシャム介入を用いたため、非介入群との比較を行うさらなる研究が必要です。
今後の展望
この研究は、進行性多発性硬化症の治療法を探求する上で重要な一歩を踏み出しました。しかし、認知リハビリテーションと運動の組み合わせが必ずしも処理速度の改善に寄与しないことが示されたため、これらの方法をさらに洗練させる必要があります。
安全性と有害事象
介入に関連する11件の有害事象が報告されましたが、これらは比較的軽度であったことが注目に値します。これは、提案された介入が、進行性MS患者にとって安全である可能性を示唆しています。
総括
この研究は、進行性多発性硬化症の治療法を探求する上での新たな洞察を提供します。認知リハビリテーションと運動の組み合わせが必ずしも処理速度の改善に寄与しないことが判明したため、これらの治療法を改善し、進行性MS患者の生活の質を向上させるための新しいアプローチの探求が重要です。今後、非介入群との比較を含むさらなる研究が必要とされます。これにより、進行性MS患者における認知リハビリテーションと運動の真の影響をより明確に理解することができるでしょう。
試験の登録情報
この試験はClinicalTrials.govに登録されており、NCT03679468で完了しています。進行性多発性硬化症の治療法に関する研究は進行中であり、今後も新しい発見が期待されます。
参考文献:
他の文献紹介: