概要
椎間関節は、隣接する椎骨を連結する精緻な関節構造であり、脊椎の屈曲、回旋、伸展を可能にします。これらの関節の動作時には、背部を捻る際に特徴的な「パキッ」という音が発生します。体内の他の関節同様、椎間関節も安定性を促進し、関節液を封じ込める繊維質の関節包によって保護されています。脊椎が不意な衝撃を受けたり、その機能範囲を超えた動きを強いられたりした場合、椎間関節の捻挫が発生するリスクがあります。
椎間関節捻挫と筋肉損傷の違い
筋肉の損傷は、重い物を床から持ち上げる際に筋肉に過度の力が加わったときに起こります。一方で、捻挫は関節が最大限に伸びた状態でねじれたり、強い衝撃を受けたりした時に発生します。両者の痛みは似ていることもありますが、発生原因が異なるため、治療法も少し異なります。
兆候と症状
椎間関節の捻挫は主に腰で起こり、通常片側だけに痛みが現れます。この痛みは、炎症を起こしている椎間関節にストレスを加えるような、背中を捻ったり伸ばしたり反らしたりする動きで引き起こされます。これらの動作をすると、痛みは鋭く感じられ、特に急性期の安静時には鈍痛が続くことが多いです。
治療戦略
目的とアプローチ方法
椎間関節捻挫の治療目的は、脊椎の完全な可動性を回復させることです。筋肉損傷の治療と似ていますが、焦点は椎間関節の機能回復にあります。
治療のフェーズ
1. 初期治療(第1フェーズ): 軟部組織の動きとストレッチを通じて、周囲の筋肉の痛みや緊張、けいれんを緩和します。
2. 可動性回復(第2フェーズ): 脊椎の屈曲と伸展の運動を含む動きとストレッチで、脊椎の完全な可動範囲を取り戻します。
3. 筋力強化(第3フェーズ): 可動性が正常に戻り、痛みが解消された後、股関節と腰部の筋肉強化に焦点を当てます。
第1フェーズ-初期治療
大臀筋と梨状筋の可動性
大臀筋と梨状筋の可動性を高めるためには、フォームローラーに座り、体を片方に傾けて大臀筋に体重をかけます。大臀筋全域を、上下左右にローラーを動かしてください。圧力を高めるには、片足を反対側の膝に乗せて筋肉を伸ばします。さらに特定の箇所に圧力を加えたい場合は、大きめもしくは小さめのマッサージボールを使うと良いでしょう。
大腿筋膜張筋のモビライゼーション
フォームローラーを使用し、太腿の側面に沿った筋肉の下にそれを置いて横になります。大腿部側面の上部から下部にかけてローラーを動かします。この間、脊椎を中立の位置に保つことが大切です。ボールを使用する場合、壁に寄りかかり立った状態でこの運動を行うことも可能です。
第2フェーズ
チャイルドポーズ
四つん這いの姿勢をとります。手のひらは地面につけたまま、お尻をかかとの方向へ下ろし、同時に頭を腕の間から下げます。このストレッチを保持しても良いし、初期の姿勢に戻って動作を繰り返し、可動性のエクササイズとしても行えます。
コブラのポーズ
うつ伏せの姿勢で、前腕を肩の下に置いてください。背中はリラックスさせ、腰は地面に保ちながら、前腕(または手を使って)を押し、痛みが出ない範囲で背中をなるべく反らせます。最大限に反らせた位置で一時停止し、数秒間かそれ以上キープします。その後、元の姿勢に戻り、この動作を繰り返してください。
鳩のポーズ
床に膝をつき、下の脚を体から垂直に伸ばしてから、後ろ足を後方に滑らせます。ウエストから前傾し、大臀筋にストレッチを感じるまで体を前に倒します。膝に痛みがある場合や、開始姿勢を快適に取れない場合は、膝の下に枕を置くか、床の片方(曲げている膝の側)の部分に枕を入れるなどをして膝を高くしてください。
腰部回旋ストレッチ
まず仰向けに寝て、膝と股関節を約90度に曲げます。次に、体の反対側に手を伸ばし、持ち上げた膝の外側を手で優しく抱えます。両肩は床に密着させた状態で、手を使って膝を体の反対側へとゆっくりと床の方向に引き寄せます。脊椎が快適に許す限り、体を回旋させてください。
第3フェーズ
片脚ブリッジ
ブリッジの初期姿勢をとり、片脚を上げます。その脚を完全に伸ばすか、または約90度に曲げた状態にします。床を押して腰を伸ばし、腰が完全に伸びたときに大臀筋を強く締めます。この収縮を1〜2秒間キープしましょう。
バンドスクワット
肩幅程度に足を開いて立ちます。大腿部にバンドを巻き、最大限の大腿部を外側に開きます。動作を始めるには、腰をわずかに後ろに引いてから直接下に腰を下ろします。最下点まで下がる時は、脊椎を中立の位置に保ち、膝をつま先の方向に合わせます。
ドンキーキック
四つん這いの姿勢で、肩を手首の上に、腰を膝の上に位置させてください。膝は曲げたままで、片脚を後ろに持ち上げます。脊椎を回転させることなく、股関節の許容範囲内でのみ脚を動かします。
バードドッグのポーズ
四つん這いになり、肩を手首の真上、腰を膝の真上に位置させます。片腕を伸ばしつつ、反対の脚も同時に伸ばします。この動作を行う間、脊椎は中立の位置を保ち、背中が反らないよう注意してください。次に、反対の腕と脚で同じ動作を繰り返します。
まとめ
椎間関節捻挫は適切な治療とリハビリテーションによって管理できます。自己診断せずに、専門家の診断を受けることが重要です。また、治療の進行に応じて、専門家の指導の下で運動療法を行うことが効果的です。